祭りの力で町に「彩」が戻る(福島県広野町 浜下り神事)
JR常磐線の広野駅に降り立ったとき、あの何とも言えない静寂を感じた。
"あの"というのは、津波の被害を受けた地域独特の、少し胸が苦しくなるような感覚だ。
しかし数時間後、祭りの力で状況は一変した。
「わっしょい!わっしょい!」の掛け声とともに、8年ぶりの神輿が上がると、人々が家から飛び出してきて、いつの間にか笑顔が溢れる。静かだった町に彩りが灯る。
福島県広野町は、福島第一原発の影響で4年前まで避難区域に設定されていた場所。鹿島時神社に残る浜下り神事は人々の誇り。8年ぶりのこの賑わいを。みんな、待っていた。この土地に昔から紡がれてきた文化が復活するのを待ち望んでいた。
地元の方の笑顔に触れて、思わず涙がこぼれてしまった。
祭の力って、すごい。
今回ご縁をいただき、特別に東京からボランティアとして祭りに参加をさせてもらった。ヨソ者ではあるけれど、その渦の中に一緒に居させてもらえることが本当に嬉しかった。神事が終わり、いざ神輿が上がるという段になって、自然発生的に円陣がはじまった。慌てて輪の中に入ると、一気にテンションが上がる!
クライマックスは、まさに、「浜下り」だ。海の中に入るとても綺麗だとてもきれいな海。(わかめが美味しそうだ)。神輿を海に浸し厄を払う禊の行為は、昔からずっと続いてきたんだろう。
帰り道。ふと、想像してみた。8年前のこと。地元の人にとってこの海は、憎しみの対象であったかもしれない。しかし、恵みの海であることに変わりはない。
お祭りは「非日常」。しかし今回はその意味合いが違った。非日常そのものよりも、「(非日常があるという)日常が戻ってくること」の大切さを身をもって感じた。たくさんの人の尽力の結果、祭の復活にたどり着いたのだと思う。
「復活」しても、時は進んでいく。これからは、昔のままのようにはいかないという事実に直面することもあるだろう。その中で、自分たちにとって大切な文化をどうやって後世につないでいけるのか、本当の勝負はこれからなのかもしれない。
この大切なお祭りが今後も引き継がれていきますように。
祭りは続く。