神様にしか見えない光景(釜石祭り)

神降りる瞬間

港に10隻を超える大漁旗を掲げた漁船が帰ってきて、虎舞の格好をした地元の少年たちが全速力で走ってきたかと思うと、お神輿が乗った船に向かって伝統の虎舞いや獅子舞の演技を奉納する。

その瞬間は不意打ちをするように突然やってきた。お囃子や笛の音が大きくなり、漁船からは大音量のブザー音、虎や獅子たちが横に並んで花道をつくり始める。あまりの「騒然さ」に訳も分からず圧倒されていると、船からお神輿が担ぎ出され、担ぎ手のもとに渡っていった。わずか数十秒の出来事だったが、まさに身の毛もよだつような特別な瞬間を目撃したのだ。

 

釜石祭りとは

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10月第2週の週末に行われる、尾崎神社例大祭新日鉄石山神社例大祭りの合同祭。昭和42年に釜石市制施行30周年を機に合同祭として実施したのが始まりで、「曳舟祭り」と「神輿合同市内渡御」が有名

・浜の守り神である尾崎神社は、市街地の近くにある里宮と、釜石湾の対岸にある奥宮がある

・祭りの際には、里宮から奥宮まで船でご神体を迎えに行く必要がある(曳舟祭り)

・神輿合同市内渡御では、虎舞や鹿踊りといった岩手県伝統芸能も行われる

今回は1日目に曳舟祭りを観覧し、2日目に尾崎神社の神社神輿を担がせていただいた。2日間とも清々しい青空に恵まれ、祭りを堪能させていただいた。

 

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釜石市自体が鉄と魚とラグビーの街と謳う通り、釜石祭りは漁師の誇りと伝統、新日鉄を中心とした産業の融合を象徴したようなものであった。

1日目は漁師の祭り。朝8時過ぎに釜石港に向かうとすでに大漁旗を立てた船が無数に並んでおり、お囃子とともに大音量で演歌がかかっている。(やはり漁船には演歌が似合う。その影響で今もyoutubeで演歌を聞きながら書いている)

それぞれの町ごとに漁船に乗り込み、パフォーマンスをしながら港内をぐるぐると回り、船は対岸に向かって港を離れていく。およそ2時間後に船は帰ってきて、同じく何度かパフォーマンスをしたのちに、冒頭の光景が広がるのだ。迫力のある1日目だけでも一見の価値あり。

 

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飲食店にも虎舞。

 

2日目は神社神輿を担がせていただくことに。尾崎神社の社務所で氏子の格好に着替えて出発する。神社神輿はかなり重いものだったが、今年は担ぎ手が多かったとのことで順番で担いだため、あまりその重さを実感することはなかった。


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神社神輿を担ぐ(その行列に入る)とどんなことが起きるか。道行く人に手を合わせて拝まれ、またポイントポイントの御旅所では、虎舞や獅子舞などが回りを囲んで囃し立ててくれるのだ。まさに「神様にしか見れない光景」を見ることができるのだ。その瞬間は、写真を撮ることも憚られ、収めることができなかったが、普通は見れないものであることに間違い無い。

全ての行程を終え港に戻ると、喧騒は無くなり静かな時間が流れていた。まるで幻想だったかのよう。駅への帰り道、町中に響き渡るような大音量で緊急地震速報が流れた。瞬間、ビルが崩れたままの辺りを見渡し、地震後の経路を頭でシュミレーションした。ゾワッと感じる恐怖。幸い地震の揺れはほとんどなかったものの、いまでもそれは進行形のだということを体感した。

 

祭りは続く