マツリテーターへの道

日常に"祭り"というスパイスを

「わっしょい!」でつながる夜(秩父夜祭り体験記)

気温0℃を下回る夜の秩父。今年はこれでも暖かいと言われるが、身体には堪える寒さだ。夜9時、クライマックスの団子坂に近づくにつれ、徐々に曳き手のテンションが上がっていく。山車の曳き手は100人以上と十分な数がいるので一人一人の負担は少ないが、縄を持つ腕に伝わる車輪の振動を通じて、自分が「祭りの担い手」だということを意識させられる。
それにしてもものすごい数の観客。沿道には人、人、人。家やビルの二階、三階、屋上にも人が溢れ、こちらを見つめている。それに向かって、曳き手である私は「わっしょい!わっしょい!」と声を掛ける。すると沿道の方々から「わっしょい!」の声が返ってくる。目が合って、"前のめりの気配"を感じた人とは、ハイタッチをする。特に自分の母親よりも少し上のおばちゃん世代はとっても元気で、声と笑顔とハイタッチのコミュニケーションを交わす。

秩父夜祭り。山車と曳き手を通じて、多くの人が祭りと「つながる」夜。

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秩父夜祭りとは
毎年12月2日/3日に行われる埼玉県秩父市の「秩父夜祭」。秩父神社例大祭にも位置づけられ、300年以上の歴史を持つ、祇園祭高山祭と並んで日本三大曳山(ひきやま)祭りに数えられる『豪華絢爛』なお祭り。10mを超える大型の山車や傘鉾(かさぼこ)が6基運行され、それぞれの彫刻の美しさ、鳴り止まないお囃子、神楽の舞、真冬の夜空に広がる花火と、まさに祭りの醍醐味を詰め込んだ総合芸術といえる。

今回は昨年に引き続き中町地区に声掛けをいただき、3日の夕方から山車を引かせていただいた。

祭りの由来
良いか悪いかは別として、このあたりも知っていると"粋"に楽しめる。
(今年の流行語にもなったけれど、いつの世も男女の色恋はドラマを生む)

最も知れ渡っている有名な伝説は武甲山男神(蛇神・蔵王権現)と秩父神社の女神(妙見菩薩)が年に一度の逢瀬を楽しむというものである。
男神には正妻がいて、神幸路の途中にある諏訪神社の八坂刀売命であるとされ3日の番場町諏訪渡りは年に1度の逢瀬を楽しむ許可を求める祭礼だといわれている。
神幸祭のときに諏訪神社の前を通過する際に各町会の山車は正妻の女神を怒らせないように例外的に屋台囃子の演奏を止め数メートルすすむ。この風習も諏訪渡りと呼ばれている。

http://www17.plala.or.jp/birdone11313/zatugaku1.5.html より抜粋


ユネスコ無形文化遺産登録へ
今年は祭り前日の12月1日未明に、秩父夜祭りを含む全国33行事の「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産登録が決定した。加えて今年は本祭である3日が土曜日に当たったことも重なり、30万人を超える史上最高の人手だったという。 


祭りに飛び込む
祭りの衣装は大切。衣装を身に付けることで、自分が担い手側であることを示すと同時に、その町の誇りと責任も身に纏うことになる。担い手は祭りの一部。どうせ着るなら格好良く、ということで中町の方に鉢巻の締め方を教えてもらう。

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メインである本祭夜の部がスタートしたのは夜の17時半から。一年で一番日が短い季節。この時間にはすっかり日も暮れている。

山車を曳くという行為は一見地味だが、ここでは「わっしょい!わっしょい!」と威勢良く声を発し観客も呼応するということを通じて、互いに祭りを盛り上げ、楽しく時間を過ごすための工夫をする。(人は「わっしょい」と発声するだけで嬉しい気持ちになれる、というのが今回改めての気づき)

地元の男衆の、かなりの重量の山車を旋回させる技術、滞りなく祭りを運行していくためテキパキとした動き、山車の上に乗る方々のピクリとも笑うことのない硬派の表情は、気持ちいいくらい格好いい。そして祭りギャルたちの工夫を凝らしたお洒落な装いも必見!(分野関わらず、やはり今の時代、女性の方が元気があるなと改めて実感)

そして、クライマックスはやはり団子坂だ。
6基の山車が集まる御旅所の前の短くて急な坂を、曳き手全員の力を合わせて山車を引き上げる。その瞬間にババババーンと、一気に花火が上がる。

一生に一度しか担うことのできないという舵取り役(山車の上で提灯を持つ役)の四人にとっては、人生で一番のハイライトになるかもしれない興奮の瞬間。

山車を引き上げた瞬間は爽快で、安堵と達成感に包まれる。

その後、御旅所で神事を終え、町まで山車を引き降ろしを行い、すべての行程が終わったのは午前3時前。これが「夜祭り」たる所以か。歩き疲れて身体はヘトヘトだが、心はホクホクあたたかい。

また来年も、この祭りが盛大に行われることを願って。

 

祭りは続く。

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